元素の命名について

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・ 元素の命名について (chemical element naming)

No.元素名Sym備考
1水素H キャベンディッシュ「燃える空気」(英) , シェーレ「フロギストン(燃素)」(典)
ギトン・ド・モルボー「hydrogène」(仏) =hýdōr [水] + génneaō [生じる] (希)
宇田川榕菴『舎密開宗』(1837.日)「水素」, =waterstof(蘭) =water [水] + stof [物質]
青地林宗『気海観瀾』(1827.日)「水質」, 高野長英『遠西水質論』「水原」(日)
水を意味する語 : aqua(ラ), agua(西・葡), acqua(伊), ma(剌), su; suyn(土),us; usu(蒙)
vath(諾), voda(露) Waskan; Watskan(古独), Wasser(独), water(英・蘭)
2ヘリウムHe ロッキヤー「helium」(1871.1 .英)=hélios [太陽](希) の語尾だけラテン語の中性語尾。
3リチウムLi アルフェドソン(丁) lithos[石](希); lapis(拉) 鉱物中にのみ存在するとした当時の説による。
4ベリリウムBe ボクラン(仏) beryllos[緑柱石](希); beryl(英); Beryll,Brille[メガネ](独)
5硼素B デーヴィー(英) burah[白](斯); buraq[白](剌); boracium,boron(英)
6炭素C すみ。Carbon(拉); charbon(仏); Kohle(独)
7窒素N シェーレ「腐った空気」(典), ラボアジエ「azote」(1776.仏) =a [否定の前置詞] + zōé [生存](希)
Stickstoff(独), stikstof(蘭) =窒息素の意。(日本語の窒素はオランダ語経由)
ラボアジエ「nitrigène」(1789.仏), シャプタル「nitrogène」(1790.仏)
(ボツ ※ ベルトレ(仏/1785)が、アンモニア中のアルカリ素「alkaligène」の名を提唱したが、この気体は硝酸にも含まれるうえ、他のアルカリに含まれる証拠がないことからボツになった。)
硝石を意味する語 : Natrun(剌), nitron(希), nitrum(ラ), néther(ヘ), Salpeter(独)
8酸素O シェーレ「火の空気」(典), ラボアジエ「生気」「oxigine」(仏)
= oxýs [鋭い、酸い] + gen [生産、起源を意味する語幹](希), ※ のちoxygèneに改称。
oxygen(英), Sauerstoff(独), zuurstof(蘭)酸素(日)=オランダ語訳。
(ボツネーム? ※ 塩素の研究がすすむと、塩酸(HCl)は酸素(O)を含まないことが明らかとなり、酸素の名は、実は水素であることがわかってきたが、誤訳を改称するには時間が経ちすぎた。)
9弗素F モアサン(仏) fluere[流れる](拉) 融点の低さから、金属の融剤に利用された。
10ネオンNe ラムゼー「neon」(英) =形容詞neos [新しい、若い](希); novus(拉)
11ナトリウムNa デーヴィー(英) natran[清浄剤](希); natrium(拉); sodium(英)
12マグネシウムMg デーヴィー(英) Magnesia alba[白苦土](拉) 小アジアの一地方で多く産出されたという。
13アルミニウムAl エルステッド(丁) alumen[明礬](拉) Alを含むミョウバンに因む。
14珪素Si J.J.ベルセリウス(典) silex[火打ち石](拉) 外観からの命名。
15リン(燐)P H.ブラント(独) 死体からの発光。phos[光]+phoros[運ぶもの、逓伝体](希)
16硫黄S ゆあわ。火の元。sulvere(梵); sulpur(拉); soufre(仏); schwefel(独); zolfo(伊); azufre(西)
17塩素Cl デーヴィー(英) chloros[黄緑色](希) 気体の色に因む。
18アルゴンAr レーリーとラムゼー(英) a[否定]+ergon[働く](希) 不活性、怠け者の意。
19カリウムK デーヴィー(英) Kalium[植物の灰](拉); al-qali[灰分](剌); potash[ポットの燃滓](英)
20カルシウムCa デーヴィー(英) calx[石灰](拉) 石灰中に発見されたことにちなむ。
21スカンジウムSc ニルソンとクレーヴェ(典) Scandia[ノルマン人の国の古名](拉) 発見者の故国に因む。
22チタンTi グレゴール(英) titan[巨人](希) ウランに次ぐ発見で、神話にあやかる命名。
23バナジウムV デル・リオ(西) Vanadis 古代スカンジナビアの愛と美の女神Freyaの別名に因む。
24クロムCr ボクラン(仏) 色彩豊かな化合物に富む性質による。chroma[色](希); color(拉); couleur(仏)
25マンガンMn ガーン(典) Magnesia nigre[黒苦土](拉)。マグネシウム同様の由来。
26鉄(鐵)Fe くろがね。まっすぐ(呈)モノをきる金属。ferrum[硬い](拉); iron(英); fer(仏); Eisen(独); ferro(伊)
27コバルトCo G.ブラント(典) kobalos[山の神](希); cobalus(拉); Kobold[妖精](独) 精錬に困難な金属。
28ニッケルNi クローンステッド(典) 偽銅。銅鉱での俗称”ニコラス”の名にちなむ。Nicholas(独)
29Cu あかがね。孔(同)をあけ易い金属。chalkos(希); kupfer(拉):キプロス島に由来?
30亜鉛Zn 鉛に似て異なる金属。→錫 参照:stan(拉); tine(英); Zinne, Zinke(独)
31ガリウムGa ド・ボアボードラン(仏) Gallia[フランスのラテン名](拉)。
32ゲルマニウムGe ヴィンクラー(独) Germania[ゲルマン人の土地](拉) 発見者の故国に因む。
33砒素As A.マグヌス(独) zarnikh[金の],zar[金](斯); azzirnikh[雄黄、砒石](剌)
34セレンSe J.J.ベルセリウス(典) Selene[月](希) テルルに似る性質のゆえによる命名。
35臭素Br バラール(仏) bromos[悪臭](希) IやClと違い、色ではなく特徴的な刺激臭による命名。
36クリプトンKr ラムゼー「krypton」(希) 形容詞 kryptós [隠れた、秘密の]。
37ルビジウムRb ブンゼンとキルヒホフ(独) erythros(希); ruber[紅色](拉) 発光スペクトル線の色に因む。
38ストロンチウムSr デーヴィー(英) Strontian(蘇) 産地、スコットランドのストロンチアン村の名に因む。
39イットリウムY ガドリン(芬) 原鉱物の産地、スウェーデンのイッテルビー村の名による。Ytterby(典)
40ジルコニウムZr クラプロート(独) zar[金](斯); zarqum(剌)。宝石のひとつとして、高価な金に由来する。
41ニオブNb ハッチェット(英) Niobe[深い悲しみ](希) タンタル発見と神話との関係に因む。
42モリブデンMo シェーレ(典) 字が書ける鉱石の総称。molobdos[鉛](希)
43テクネチウムTc セグレとペリエ(伊) tekhnetos[人工の](希) 初めて人工的につくられた元素。
44ルテニウムRu クラウス(露) Ruthenia[ロシア国の通称](拉)
45ロジウムRh ウォラストン(英) rhodon[バラ](希) これの塩の水溶液がバラ色だったことに基づく。
46パラジウムPd ウォラストン(英) Pallas[アテネの守護神](希) 当時発見された小惑星の名にあやかる命名。
47Ag しろがね。腐食せず残(艮)る金属。argyros(希); argentum(拉); argent(仏); Silber(独)
48カドミウムCd シュトロマイヤー(独) Kadmos[フェニキア王子名](希) 鋳物工場から出た金属クズの俗称。
49インジウムIn ライヒとリヒテル(独) Indus[流れ、大河](梵); 発光スペクトル線の濃い藍色(indigo)に因む。
50Sn すず。清鉛。歯(?)。stan(拉); tine(英); Zinne, Zinke(独)
51アンチモンSb stimmi[mark 英],antimonos(希); stibium[顔料用鉱石],antimonia[僧侶?](拉)
52テルルTe ミュラー(仏) ローマ神話の結婚と豊作を司る女神名にちなむ。tellus[地球](拉)
53沃素I フールトア(仏) ion[すみれ色]+eidos[形]=iodes(希) 気体の色に因む。
54キセノンXe ラムゼー「Xenon」(希) [賓客、風来坊] という意味の男性名詞 xénosの中性名詞形。
55セシウムCs ブンゼンとキルヒホフ(独) caesius[灰青色](拉) 発光スペクトル線の色に因む。
56バリウムBa デーヴィー(英) barys[重い](希) 発見された母体「重土(baryta:英,Baryt:独)」の名による。
57ランタンLa モサンデル(典) lanthanein[隠れ潜む](希) 分離が難を要したところの命名。
58セリウムCe クラプロート(独),J.J.ベルセリウス(典) Ceres[ギリシャの豊穣神](希) 理由は同上。
59プラセオジムPr フォン・ウェルスバッハ(墺) prasios[緑色](希)+dydym[母体鉱石](独)。
60ネオジムNd フォン・ウェルスバッハ(墺) neos[新しい](拉)+dydym(同上) 上記のPrと共に単離。
61プロメチウムPm マリンスキーとグレンデニンとコリエル(米) Prometheus[火の神](希)
62サマリウムSm ド・ボアボードラン(仏) samarskite[サマルスキー石](英) 鉱物の名にちなんだ命名。
63ユウロピウムEu ドゥマルセイ(仏) Europa(拉) フェニキア王の娘エウロパ、ヨーロッパの名に因む。
64ガドリニウムGd ド・マリニャック(瑞) 分離に使用した鉱石の発見者ガドリンの功績に因む。
65テルビウムTb モサンデル(典) 語源同上。鉱石イットリアから分離した鉱石のテルビアより発見。
66ジスプロシウムDy ド・ボアボードラン(仏) dys[難しい]+prositos[親和性の](希) 入手困難の意。
67ホルミウムHo クレーヴェ(典) Holmia[スウェーデン首都ストックホルムのラテン名](拉)
68エルビウムEr モサンデル(典) Ytterby[鉱石の産地名] 後半の-erbyから命名さる。
69ツリウムTm ド・マリニャック(瑞) thoule[世界の果て](希); thule[極北の地の古名](拉)
70イッテルビウムYb ド・マリニャック(瑞) Ytterby。鉱石の産地イッテルビー村の名を記念した命名。
71ルテチウムLu ユルバン(仏)とフォン・ウェルスバッハ(墺) Lutetia[パリのラテン名](仏)。
72ハフニウムHf コスター(蘭),フォン・ヘヴェシー(洪) Hafnia[コペンハーゲンのラテン名](拉)
73タンタルTa エッケベリ(典) Tantaros[地獄の苦しみ](希) 発見と確認に永年を労したことに因むとか。
74タングステンW デ・エルヤルト兄弟(西) tung[重い]+sten[石](典) シェーレの命名。Wolfram[錫を食う狼](拉)
75レニウムRe ノダック夫妻とベルク(独) rheos[流れ](希) ライン河にちなむ命名。
76オスミウムOs テナント(英) osme[におい](希) 蒸気が特殊な匂いを持つことから命名。
77イリジウムIr テナント(英) iris[虹、遠く行く者](希) 塩類水溶液が種類により多彩な色をもつことによる。
78白金Pt デ・ウロア(西) platinum[金属](拉); plata[銀](西)
79Au こがね。純度の高い鉱石。aurum(拉); or(仏); Gold(独); aureo(伊)
80水銀(汞)Hg 水星。hydor[水]+argyros[銀](希); argentum vivum[活動的な銀](拉); quick silver(英)
81タリウムTl ラミー(仏),クルックス(英) thallos[緑の若葉](希) 発光スペクトル線の色に因む。
82Pb なまり。硬くない熔融性の金属。plumbum(拉); lead(英); plomb(仏); lot(独); piombo(伊)
83ビスマス(蒼鉛)Bi bismutum(ラ:16世紀の造語);Weiss[白]+Muth[物質(matter)の意か],Wismut(独);
84ポロニウムPo キュリー夫妻(仏) polska(波); pole[ポーランドのロシア名](露) 夫人の故国に因む。
85アスタチンAt マッケンジーとコーソンとセグレ(米) astatos[不安定](希) 元素寿命が短く不安定のゆえ。
86ラドンRn ドルン(独) ラジウムが崩壊して生じる希ガスの意。1923年までemanationという。
87フランシウムFr ペレイ(仏) France[フランス](希) 発見者の故国に因む。
88ラジウムRa キュリー夫妻(仏) radius,ray[光線、放射線](拉) 放射性元素であることから。
89アクチニウムAc ドゥビエルヌ(仏) aktis[光線](希) 放射性元素であることから。
90トリウムTh J.J.ベルセリウス(典) Thor[雷神ソール] 放射性物質ゆえの命名か。北欧神話に因む。
91プロトアクチニウムPa ハーン(独),マイトナー(墺),ソディーとクランストン(英) proto[原始の]+aktis[光線](希)。
92ウランU クラプロート(独) 1781発見の天王星の名をとる。uranos[天空](希)
93ネプツニウムNp マクミランとエーベルソン(米) Neptune[海の神](拉) 新惑星の海王星の名に因む。
94プルトニウムPu シーボーグとケネディとウォール(米) Pluto[冥土の神](希・ラ) 新惑星の名に因む。
95アメリシウムAm シーボーグとジェームズとモーガンとギオルソ(米) America、合成、発見された国名にちなむ。
96キュリウムCm シーボーグとジェームズ(米) P.Curie&M.S-Curie、放射線研究の先駆者キュリー夫妻の名を記念。
97バークリウムBk トンプソンとギオルソとシーボーグ(米) Berkeley、カリフォルニア大学の所在地名に由来。
98カリホルニウムCf トンプソンとストリートとギオルソとシーボーグ(米) California、カリフォルニアの名に由来。
99アインスタイニウムEs トンプソンとハーヴェイとギオルソとチョピンなど(米) A.Einstein、アインシュタイン博士の名を記念。
100フェルミウムFm トンプソンとハーヴェイとギオルソとチョピンなど(米) E.Fermi、フェルミ博士の名を記念。
101メンデレビウムMd ギオルソとハーヴェイとチョピンとトンプソンとシーボーグ(米) D.I.Mendelejev、元素周期の発見者を記念。
102ノーベリウムNo ギオルソとシッケランドとウォルトンとシーボーグ(米) A.B.Nobel、ダイナマイト発明者の功績を記念。
103ローレンシウムLr ギオルソとシッケランドとラーシュとラリマー(米) E.O.Lawrence、サイクロトロン発明者の名に因む。
104ラザフォージウムRf カリフォルニア大学バークレー校(米) E.Rutherford、原子核物理学者ラザフォード氏の功績を記念。
105ドゥブニウムDb カリフォルニア大学バークレー校(米) Dubna、ロシアの原子核研究所が建つ地名ドゥブナに因む。
106シーボーギウムSg カリフォルニア大学バークレー校(米) G.T.Seaborg、重ウラン元素研究者の功績を記念。
107ボーリウムBh 重イオン研究所(独) N.H.D.Bohr、原子構造の発見者ボーア氏の功績を記念。
108ハッシウムHs 重イオン研究所(独) Hassia、研究所が建つ州名ヘッセンに由来。
109マイトネリウムMt 重イオン研究所(独) L.Meitner、ウランの核分裂発見者マイトナー氏の功績を記念。
110ダームスタチウムDs 重イオン研究所(独) Darmstadt、研究所が建つ市名ダルムシュタットに由来。
111レントゲニウムRg 重イオン研究所(独) W.C.Roentgen、X線発見者の功績を記念。
112コペルニシウムCn 重イオン研究所(独) N.Copernicus、近代的認識論に影響を与えた天文学者の名を記念。
113ウンウントリウムUut 理化学研究所(日) 113番目の元素の意。
114フレロビウムFl ドゥブナ合同原子核研究所のフレロフ核反応研究所(露) G.Flerov、核物理学者の功績を記念。
115ウンウンペンチウムUup ドゥブナ合同原子核研究所(露)とローレンスリバモア国立研究所(米) 115番目の元素の意。
116リバモリウムLv ローレンス・リバモア国立研究所(米)&フレロフ核反応研究所(露) Livermore、研究所が建つ市名を記念。
117ウンウンセプチウムUus フレロフ核反応研究所(露)117番目の元素の意。
118ウンウンオクチウムUuo ドゥブナ合同原子核研究所(露)118番目の元素の意。

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